NETFLIXにて2月29日から配信開始となった『パレード』鑑賞。本作はこの世に未練を抱える死者たちが、生と死の狭間の世界に止まり続け、残された者たちに思いを馳せる姿を描いたヒューマンドラマ。
藤井道人監督としては珍しいファンタジックな設定の群像劇なのだが、まずは長澤まさみ、横浜流星をはじめとする役者陣の演技が良い。特に個人的に涙腺を刺激されたのは北村有起哉の演技だ。中野量太監督の『浅田家!』でも、震災により家族を失った父親の役を演じていたが、本作でも家族を失った深い悲しみを、セリフではなく表情一つで見事に体現。その他にもでんでんや舘ひろしなど、日本映画界の手練れたちによる演技合戦が見物なのは間違いない。
しかし、演技が良くても設定やドラマは杜撰の一言に尽きる。
まず、死者の設定に疑問を抱かずにはいられない。生者と会話ができず触れることができないにも関わらず、乗り物に乗ったり食事を摂ることができるのはなぜだろう。ドアを開けたり新聞を読めたりするのだから、普通に生きているのとあまり変わらないではないか。もし生者に伝えたいことがあるのなら紙に書いて渡せば良い。
また、未練が晴れれば成仏できるという設定があり、各キャラクターのエピソードが語られていくのだが、それぞれのエピソードが非常に弱く取ってつけた感が否めない。この手の群像劇は主となる話があり、多少それに関連する形で各エピソードが語られるものだが、そういった関連が希薄なため、話が前に進んでいる感じがしないというのも問題だ。
後、こういったファンタジーをやる場合、観客の視点と重なるようなキャラクターを配置するべきなのだが、本作にはそれがない。坂口健太郎を死者が見える生者で、小説家として話のネタを作るために彼らに協力するということにしてはどうだったろうか。そうすればラストの旅立ちや別れのシーンもより胸に迫ったはずだ。
そうした消化不良感がありながらも次回作に期待したい。
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