【紹介・解説】『アメリカン・フィクション』人種に対する偏見を浮かび上がらせた傑作風刺コメディ

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今回は2023年製作のアメリカ映画『アメリカン・フィクション』を紹介いたします!
まめキネマ独自の視点から深掘り解説していきますので、最後までお付き合いください!

目次

キャスト・スタッフ・情報

(c)2023 MRC II Distribution Company L.P. All Rights Reserved.

<あらすじ・ジャンル>
苦境に立たされた黒人小説家が、世間一般の黒人のイメージを盛り込んだ大衆小説を冗談半分で執筆し、思わぬ成功を収めてしまう様子を描いたコメディ・ドラマ

出演:ジェフリー・ライト、スターリング・K・ブラウン、エリカ・アレクサンダー
監督:コード・ジェファーソン
2023年製作/118分/アメリカ/原題:American Fiction

感想・あらすじ

堂々たる監督デビュー作

本作はトロント国際映画祭で最高賞にあたる観客賞を受賞し、第96回アカデミー賞では作品賞ほか5部門にノミネートされ、見事脚色賞に輝いた話題作です。

監督は『グッド・プレイス』や『ウォッチメン』などの人気ドラマで脚本を手掛けてきたコード・ジェファーソンさんが務めまして、監督デビュー作ながら、堂々たる傑作に仕上がっていました。

残念ながら日本ではアマプラでの配信スルーとなってしまったのですが、とにかくブラックコメディや社会風刺、そしてホームドラマとして抜群の出来でして、絶対に見逃して欲しくない作品なんですよ。
(2月27日からPrime Videoで日本初、独占配信)

はい、でそんな本作『アメリカン・フィクション』はどんな話かというと、苦境に立たされた黒人小説家が、世間一般の黒人のイメージを盛り込んだ大衆小説を冗談半分で執筆し、思わぬ成功を収めてしまう様子を描いたコメディ・ドラマです。

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人気低迷中の黒人作家のリアル

まずは冒頭、大学で英文学の教授を務める、主人公の黒人作家モンクの姿が描かれます。

彼は人気低迷中の中堅作家でして、出版社に新作を提出するも、“黒人らしさ”が足りないとの理由から中々次の作品が発表できずにいるんですよ。

というのも、業界ではいかにも、黒人に対する偏見が詰め込まれたような小説ばかりが、求められていまして、それが黒人作家が書く上でベストセラーの必須条件なんですね。

そういった不遇な状況もあり、モンクはものすごくヤサグレていまして、真面目ではあるのですが皮肉屋で常に人を見下した態度というのが染み付いてしまっているんですよ。

そしてついに、講義中の、度重なる皮肉めいた発言が大学で問題となり、モンクは休職を余儀なくされ、
これを機に久しぶりにボストンの実家に帰ることになります。

しかし、いざ帰ってみると兄弟がそれぞれ離婚していたり、母親がアルツハイマーを発症していたりと様々な厳しい現実が彼を持ち受けているんですね。

で、半ばヤケになったモンクは、冗談のつもりで貧困や銃など典型的な黒人のイメージを盛り込んだ、いかにも白人ウケしそうな実録風犯罪小説を執筆するのですが、それが元でさらなるトラブルに巻き込まれていくのでした…

果たして、モンクの命運やいかに!?というのが本作のおおまかなあらすじです。

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見どころ・注目ポイント

社会風刺要素

本作『アメリカン・フィクション』の見どころとしては社会風刺要素です。

本作は冗談で書いた最低の小説が、予想を超えてヒットしてしまうというコメディなのですが、人種に対する先入観や偏見の上に成り立っている出版業界や映画業界の欺瞞を暴く風刺劇として実に見事な作品なんですよ。

また文学や映画を通し黒人の苦悩を理解しようとしながらも、その実、エンターテイメントとして消費しているだけの白人知識層や現代社会に対する痛烈な皮肉も込められていまして、そう言った意味で我々にも深く刺さる作品なんですね。

本作の監督を務めたコード・ジェファーソンさんは、元々ジャーナリストとして活躍されていた方だけあって、そう言った問題意識を見事に表現されていました。

脚色賞受賞も納得です!

家族の再生のドラマ

あと、もう一つの見どころとしては家族映画の要素です。

本作は兄弟の離婚や母親の認知症など、様々な問題に直面する主人公の姿が描かれますが、家族の再生や絆を描いたドラマとしても絶品なんですよ。

黒人家庭を描いたホームドラマの場合、『プレシャス』(’09)『ムーンライト』(’16)『WAVES/ウェイブス』(’20)など、とかくシリアスなトーンで描かれがちですが、本作は陽気さすら感じさせる明るいトーンの作品でして、その部分に非常に新鮮さを感じました。

こういう犯罪や貧困が出て来ない黒人中産階級の普遍的なホームドラマが少ないというのも皮肉な話ですね。

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主人公の成長譚

そして特筆すべきポイントとしては主演のジェフリー・ライトさんの演技です。

真面目な知識人ではあるも、皮肉屋で人を見下しがちな、ともすれば嫌われてもおかしくない主人公を、絶妙なバランスで愛嬌たっぷりに演じていまして、主演男優賞ノミネートも納得の見事な演技でした。

やけくそになって暴走しちゃう姿なんか、ここ最近で一番笑えましたね。

ちなみにジェフリー・ライトさんは、撮影の1年ほど前に母親を亡くしており、その経験が出演の決め手になったそうです。

そんなジェフリー・ライトさん扮する主人公が成長していく姿にも注目です。

はい、というわけでですね、ラストの驚きのある仕掛けにも注目して、この今見られるべき社会風刺コメディを是非ご覧になってみてください!

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