【感想・レビュー】『カード・カウンター』この作品でしか味わえない栄養がある

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本作は軍刑務所に8年間服役し、独学で「カード・カウンティング」の技術を習得した元上等兵の男が、ギャンブルの世界に身を投じる中で、過去の罪と向き合う姿を描いたヒューマンサスペンス。

脚本家として『タクシードライバー』(’76)、『レイジング・ブル』(’80)など、数々の傑作を世に送り出してきたポール・シュレイダーが監督・脚本を務め製作した意欲作だ。

ギャンブルの世界をスリリングに描きながら、贖罪と復讐というテーマを浮かび上がらせ、アブグレイブ捕虜収容所で起きた拷問と虐待の実態に迫る。

まさにポール・シュレイダーらしい社会派な面と、宗教的テーマが結びついた見事な作品だった。
仁儀を感じさせるような展開や、大人の恋愛ドラマとしても見応え充分で、とにかく渋くてカッコいい。

特にオスカー・アイザックの演技は見もの。日々をただやり過ごすだけの虚無的な目や、時折見せる狂気が素晴らしく、『タクシードライバー』のトラビスを彷彿とさせる名演技だった。

意外にもラストは希望を感じさせ、爽やかな後味を残す。

確かにひたすら淡々と描写されていくので、本作を退屈に感じる方がいるのも分からないではないが、それでもこの作品でしか味わえない栄養がある。

それは言葉にするならば、アメリカン・ニューシネマ的な気骨、自由、解放、哲学、残酷さといったものだと思う。

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