今回は2010年製作のアメリカ映画『ブラック・スワン』を紹介いたします!
まめキネマ独自の視点から深掘り解説していきますので、最後までお付き合いください!
キャスト・スタッフ・情報
出演:ナタリー・ポートマン、バンサン・カッセル、ミラ・クニス、バーバラ・ハーシー
監督:ダーレン・アロノフスキー
2011年5月11日(水)公開[R-15] / 上映時間:110分 / 製作:2010年(米) / 配給:20世紀フォックス映画
感想・あらすじ
圧倒的な完成度の高さ
本作は第83回アカデミー賞で作品賞を含む5部門にノミネートされ、見事ナタリー・ポートマンさんが主演女優賞に輝いた、間違いなく映画史に残る傑作です。
3月1日からアマプラ見放題に追加され、このタイミングで改めて見返しましたが、公開から10年以上経っても全く色褪せない、圧倒的な完成度の高さに衝撃を受けました。
監督は「π」「レスラー」『ザ・ホエール』のダーレン・アロノフスキーでして、非常に作家性の強い監督なんですが、とにかく主人公の肉体と精神を極限まで追い込んでいく方ですね。
で、本作『ブラック・スワン』はどんな話かというと、過酷なバレエの世界を舞台に、『白鳥の湖』の主演に抜擢されたバレリーナが、プレッシャーとストレスに押しつぶされそうになり、徐々に精神が崩壊していく姿を描いたサスペンススリラーです。
錯綜する現実と非現実
まずは冒頭、ニューヨークの一流バレエ団に所属する主人公ニナの姿が描かれます。彼女は人生の全てをバレエに捧げてきた人でして、もう立派な大人なんですけど、未だに母親と二人暮らしで、部屋もぬいぐるみだらけで子供っぽくて、全く男っ気もないんですよ。
というのも、母親は典型的なステージママでして、常に母親の厳しい管理下に置かれているんで、全く自由がないんですね。
ちなみに、劇中、“世界で一番気まずいシーン”がありますのでお楽しみに。
そんな中、ニナの所属するバレエ団で、次の公演作品である『白鳥の湖』の、主役の座をかけたオーディションが開かれることになります。
ニナも気合十分でこのオーディションに参加しますが、この演目では白鳥以外にも邪悪で官能的な黒鳥を演じなければいけないので、元来純真な優等生タイプのニナは黒鳥を演じることに大変悪戦苦闘するんですね。
それでも、是が非でもこの役が欲しいニナは演出家のトマに直談判までし、どうにかこの役を勝ち取ります。
しかし、役作りに没頭するニナは、この役を演じることの極度のプレッシャーとストレスに押しつぶされそうになり、次第に現実と非現実の境界が曖昧になっていくのでした…
果たして彼女の命運やいかに!?というのが本作のおおまかなあらすじです。
見どころ・注目ポイント
ニューロティック・ホラーの要素
はい、でそんな本作『ブラック・スワン』の注目ポイントは、ニューロティック・ホラーの要素です。
「ニューロティック・ホラーとは何ぞや?」と思われた方も多いかと思いますが、ニューロティックとは「神経症的」という意味でして、一言で言うと”ある出来事によって主人公の精神が崩壊していく姿を描いた作品群”のことです。
古典的な作品ですと『ガス燈』『黒い河』、最近の作品ですと『透明人間』や『ラストナイト・イン・ソーホー』なんて作品がありましたが、そんな、ある種定番的なこの手のジャンルの中でも、本作はずば抜けて恐い作品なんですよ。
長回しを多用したドキュメンタリックなタッチと、VFXを効果的に使った幻覚描写などによって、精神が崩壊していく様が克明に描かれていきます。
見ていて、こっちもノイローゼになりそうでした。
ちなみに監督は、ロマン・ポランスキーの『反撥』(1965年)や『テナント/恐怖を借りた男』(1976年)から影響を受けたと発言していますが、まあ一番影響を受けているのは明らかに今敏監督の『パーフェクトブルー』かと思います。
暴かれる二面性
次に注目して頂きたいポイントは主人公の二面性が暴かれるスリリングな展開です。
本来、清純な白鳥側である主人公が、黒鳥に向き合う中で、彼女の中に内在する不浄さや情欲といったものが、徐々に炙り出されてい展開が、物凄く恐ろしいんですね。
ナタリーポートマンさんの清純なイメージを逆手に取ったナイスなキャスティングや、迫真の演技も合間って、よりその二面性というテーマが際立っていました。
ちなみにナタリーポートマンさんは、この役を演じるにあたり約10kgの減量による体づくりと、
約1年に渡る過酷なバレエの特訓を実行し撮影に望んだとのことです。
アカデミー主演女優賞受賞も納得の抜群の演技でした。
ということでですね、そのほかにも母と娘の歪んだ関係性や、狂気を孕んだ圧巻のバレエシーンにも注目して、この傑作スリラーを是非ご覧になってみてください!