日本映画が3作品ノミネートされるなど、例年よりもメディアで取り上げられることの多かった第96回アカデミー賞だが、とうとう結果が明らかとなった。
蓋を開けてみたらクリストファー・ノーランの『オッペンハイマー』が作品賞、監督賞を含む最多7部門を獲得。アマプラで配信中の『アメリカン・フィクション』は脚色賞を受賞し、現在劇場公開中の『落下の解剖学』は脚本賞を受賞。
何より日本中が歓喜に沸いたのは『君たちはどう生きるか』の長編アニメーション賞受賞よりも『ゴジラ-1.0』の視覚効果賞受賞の結果だろう。これがどれだけ驚くべきことかというと、まず日本映画のみならず、アジア映画で初の受賞となったことだ。
直近の受賞作を挙げると『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(’22)『DUNE/デューン 砂の惑星』(’21)『TENET テネット』(’20)などのビッグバジェット超大作ばかり。ここに予算も規模もはるかに劣る日本映画が加わったことに価値があるのだ。
これは面白いものはお金ではなくアイディアと技術で生まれることの証明でもあろう。まさにそれは日本的な強みではないか。
また視覚効果賞を監督自身がノミネート者として受賞するのは、「2001年宇宙の旅」のスタンリー・キューブリック以来、史上2人目のことなのだそうだ。
今回の受賞は間違いなく、多くの日本人やアジア人が世界へ飛び立つための門戸を開いた偉業と言えるだろう。
個人的に残念だったのは『PERFECT DAYS』が国際長編映画賞受賞を逃してしまったことだ。『PERFECT DAYS』が近年鑑賞した作品の中で一番好きな作品だった分、落胆は大きい。
あと、「スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース」が何も受賞していないのには疑問が残る。このCGアニメーション史を変えるようなエポックメイキングな作品に賞を与えないのは明らかにおかしい。もし仮に3部作の2作目に当たる作品ゆえに、今回は見送られたのだとしたら、3作目は長編アニメーション賞だけではなく、作品賞も与えて欲しい。