本作は夫が目の前で自殺をしたことで心に深い傷を負ってしまった女性が、療養のため田舎町にある豪華なカントリーハウスに訪れ、そこで同じ顔をした男たちに嫌な思いをさせられてしまうというスリラー。
主人公の目の前に訪れる同じ顔の男たちが、自己中心的だったり、男尊女卑的だったり、それぞれ女性にとっての嫌悪の象徴として登場し主人公を追い詰めていくのだが、そうしたフェミニズム的視点を持ったスリラーとして出色の出来なのは確かだ。
しかし、発端となった夫との関係性や、なぜ自殺をしたのかの説明が、ほのめかし程度で詳しく明かされないため、物語が“トラウマから立ち直る”という話にも、女性を抑圧する“男性からの自立”というスカッとする話にも回収されずモヤモヤだけが残る。
そこに本作の難解さがあるのではないか。
一方で、本作は全編を通し主人公の女性側の視点から描かれているが、夫や男性側の視点から主人公を見ると物凄く傲慢なようにも思える。本作は男性・女性関係なく、自己中心的な人間を見つめ直すような作品なのではないか。
【感想・レビュー】『MEN 同じ顔の男たち』この作品が難解な理由とは?
2024年3月3日