今回は2023年製作の日本映画『ほつれる』を紹介いたします!
まめキネマ独自の視点から深掘り解説していきますので、最後までお付き合いください!
キャスト・スタッフ・情報
出演:門脇麦、田村健太郎、染谷将太、黒木華
監督・脚本:加藤拓也
2023年9月8日(金)公開 / 上映時間:84分 / 製作:2023年(日本=仏) / 配給:ビターズ・エンド
感想・あらすじ
本作は日常に潜む“心の揺らぎ”を見事に切り取ったヒューマンドラマなんですが、とにかく門脇麦さんをはじめとする俳優陣の演技が絶品です。
もう、ここ最近の邦画は門脇麦さんか黒木華さんか、あるいは奈緒さんが出てればほぼ間違いないって感じなんですが、なんと本作ではその邦画俳優3本柱のうち、門脇麦さんと黒木華さんが出てるんですよ。
もうそれだけで見る価値のある作品なんです。
で、本作『ほつれる』はどういう話かというと、いわゆる不倫もののドラマであり、倦怠カップル物なんですね。
ほつれ出す日常
まずは冒頭、門脇麦さん扮する主人公と、染谷将太さん扮する不倫相手との逢引きのシーンから始まります。主人公は夫との夫婦生活が破綻しかけていまして、約1年前から浮気をしているんですね。
主人公は大胆にも、不倫相手と山梨に1泊2日の旅行にいくんですが、地元に帰り解散すると、
なんと、その矢先、横断歩道を渡ろうとした彼氏が交通事故に遭ってしまいます。
すぐさま主人公はスマホで救急車を呼ぼうとするですが、電話かけている途中であることにハッと気付きます。つまり彼女が通報したら二人でいたことや浮気していたことがバレてしまうので、彼女は悩み苦しむんですよ。
結局、彼女は周囲の人たちに通報を任せ、彼に駆け寄ろうともせず家に帰ってしまいます。
このあたりが本当にリアルですね。自分だったらどうするだろうって、観てるこっちの心まで揺さぶってくるようなドラマです。
結局、彼氏は亡くなってしまい、幸か不幸か不倫関係が明らかになることはなかったんですが、ここから彼女の日常生活が徐々にほつれ出していきます。
果たして、冷え切った夫婦生活や、自分自身の人生と向き合う中で、彼女が出した答えとはいかに!?
というのが本作のおおまかな、あらすじです。
見どころ・注目ポイント
リアルな会話劇
本作は劇作家、舞台演出家として注目を集める加藤拓也さんの監督長編2作目に当たる作品なんですが、まあ、舞台を手がけているだけあってセリフや会話が実に見事でした。
例えば「なんか、あれ、え、あー、ちょっと」とか普通の脚本だったら切っちゃうような言葉だったり、
あるいは文法的にはおかしいけど、日常会話なら成立するっていうセリフが頻発するんですね。
これにより、日常との地続き感が増すのに加え、演技をしているっていうよりは実際に今思ったことを口にしてるって感じが強調されて、物凄くリアルに感じるんですよ。
また、その言葉やセリフでしか伝わらないニュアンスや、
それでしか伝わらない感情というものが読み取れて、非常に良くできた味わい深い会話劇でした。
入念なリハーサル
ちなみに、あまりにも自然だから、多少アドリブも混じっているのかなと思い調べてみたんですが、なんと全部のセリフが脚本通りで、アドリブはひとつも無いらしいんですね。
そして、なんと一つ一つのシーン全て、100回以上はリハーサルをしているらしくてですね、これには驚きました。
監督の加藤拓也さんはまだ30歳とお若いんですが、すでにデヴィッド・フィンチャーやスタンリーキューブリックおもわせる完璧主義者ですね。
いや、凄い。肝がすわってます。
あと、その話を聞いて、「ドライブマイカー」を手がけた濱口竜介監督の、セリフを事前に考えないで言えるようになるまで本読みをさせるという演出メソッドを連想しました。
激推しポイント
そしてもう一つ、激推ししたいポイントとしては、田村健太郎さんの演技です。主人公の夫を演じているんですが、もう「ねちっこい」というか、「しつこい」というか、もうとにかく最高なんですよ。
彼なりのモラルや常識というものがあって、それに則って行動しているようなんですが、それが全部おかしくてですね、是非、それが極に達する、中盤の彼のある常軌を逸した行動を是非観ていただきたいです。
はい!いかがだったでしょうか。
今回は2023年製作の日本映画『ほつれる』を紹介させていただきました。
なお、本作品はAmazonプライムビデオにて見放題追加となっていますので是非チェックしてみてください!
ではまた次回、映画で素敵な旅を!