【感想・レビュー】『こちらあみ子』子供の視点から描かれる世にも不思議な世界

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NETFLIXにて2月11日から配信開始となっていた『こちらあみ子』鑑賞。本作は一風変わった言動で周囲から浮く少女の日常と人々との関係を綴った2022年製作のヒューマンドラマだ。

見る前は心温まるような作品をイメージしていたのだが、これがかなりヘヴィーな内容だった。本作の主人公あみ子は、劇中では言及されていないものの、おそらく発達障害を抱えていると言うことが窺えるのだが、その野生児のようなある種ストレートな言動の数々が、家族や周囲を振り回し徐々に均衡が崩れていく。

『エスター』のようなホラー映画ならば娯楽として享受できるのであろうが、本作ではリアルなタッチで丹念にその崩壊の過程を描かれていくのだ。しかも、それが全てあみ子の視点から物語られていく為より世界の姿が残酷に見えてしまう。一応その突飛な言動の数々にはあみ子なりの動機があり行っていることなのだが、それに耳を貸す大人も友達もいない。いつの間にかあみ子は社会からも家族からも排除されてしまう。これは地獄だ。

もし、『窓ぎわのトットちゃん』に出て来たトモエ学園のような受け入れ先があれば、あみ子はもっと幸福に生きられるのではないかと本作を観ながら思っていた。

それでも、ささやかな希望を感じさせる瞬間というのも確かにあって、坊主の子との交流やお兄ちゃんとの関係性にグッときたし、新たな始まりを予感させるラストの美しさたるや。人は何度でもやり直せるし、新しい居場所だっていくらでも作ることができるのだ。


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