【感想・レビュー】『夜明けのすべて』人々にやさしく寄り添う破格の傑作!

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2月9日劇場公開の『夜明けのすべて』鑑賞。文句のつけようのない傑作だった。

本作はPMS(月経前症候群)のため月に1度イライラをおさえられなくなる女性と、パニック障害をかかえる男性との交流を描いたヒューマンドラマだ。

このふたりが同僚としてはたらく姿をとおし、社会の生きづらさや無理解といった困難な状況を描きつつ、相手により添うことや生きることの美しさをつむぎ出す。

まだまだPMSやパニック障害への理解が追いついていない社会において、この作品がおおくの層に受けいれられている現状を嬉しく思う。

そういった病気を扱った作品だからといって、いかにもお涙頂戴の難病ものや、シリアスな話にしていないことにも好感をもった。

ある種ドキュメンタリックに、16mmフィルムのあたたかい質感で物語が展開していく。まさに三宅唱監督らしいアプローチの作品だ。

主演ふたりの演技もすばらしかった。松村北斗さんと上白石萌音さんはNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」で夫婦役を演じたそうだが、とても相性がよい。

恋人でも友人でもない、あくまで理解者同士という関係を自然体で演じきっていた。そんな自然なやりとりの中からうまれるユーモアも絶品。

個人的に号泣したポイントは移動式プラネタリウムのシーンだ。ふたりは年に一度行われる移動式プラネタリウムを担当することになるのだが、本作のテーマや物語が収斂する奇跡のようなシーンだった。

人は常に変わり続けるものなのだからただそれを受け入れればよいし、誰かとどこかでつながっているのだから離れていても寂しがることはない。

“多様性や人生の肯定”と言葉に出せば陳腐に感じるが、本作はそれを映像で語ったまぎれもない傑作だった。



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